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「右ならえ、左」では生きにくい天才と凡人。又吉直樹『火花』

芸人の世界

火花

 

芸人が芥川賞受賞。

『ピース』の又吉直樹著『火花』は売れに売れ、ネットフリックスでドラマ化。そして映画化へと繋がった。

 

芥川賞受賞で評価を受けたのは確かだが、芸人が書いた小説という話題性が先行したのも、また一つの事実でもある。

 

 

「若手芸人たちとの熱き闘い。舞台裏で苦悩する彼らの姿」

 

 

そのような内容かと思っていたが、わたしの予想とだいぶ違ったようだ。

 

駆け出しの主人公が天才と認める売れない先輩芸人神谷との日常のやりとり。

主人公が思い描く笑いと、神谷が求める笑いの本質的な違い。

その違いに圧倒的な“差”を実感するが、凡人の常識でははかることができない神谷の逸脱した行動は、およそ世間には受け入れられない。彼を許容するだけの器が世の中にはない。

 

主人公は神谷を天才と認めながらも、世の中は異物には異物の場所しか与えなく、平均値があるとすればそこから前後する適当なものが許容される世界である。

しかし平均値は平均値にしかならず、さらにそこから選ばれるのはほんの一握りである。

 

残らなかった多くのものたちは、夢という荷物を背中から下し、その代わりに現実という荷物を背負うのである。

 

 

雑感

わたしが勝手に考えていたものとちがったこともあるが、それでも先輩神谷との日常のやり取りにのめり込むように、小説に入ることができなかった。

 

終盤に描かれている主人公の漫才コンビが漫才をする箇所は、興味深く読むことができた。この時のような感覚になるのは、なにも漫才コンビだけではないだろう。

 

ただ、個人的な感想としては、芸人しか書けない芸人の「表の世界」も「裏の世界」も見たかった。

 

芸人同士の熱き『火花』だと想像していたわたしは、若手同士の漫才の争い。客の笑いの数。楽屋裏での緊張と興奮。ネタを作る苦悩と葛藤。残るもの。消えて行くもの。そういった『火花』が飛ぶような世界が書かれていると思っていたぶん、読んで違ったので期待が先行してしまった。

 

 

他に芥川賞受賞できるような作品がなかったのかもしれないが、もしかして「大人の事情」もあったのか、なかったのか。

どちらにしても話題になったことにちがいはない作品である。

火花 (文春文庫)

火花 (文春文庫)

 

 

 

(アイキャッチ画像/著作者:panzarinho)

 

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