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長い行列が作り出した夢の時間。クリスピークリームドーナツ新宿1号店閉鎖

レンジではもう温まらない

ドーナツ

著作者:Pink Sherbet Photography

 

JR新宿駅南口の改札を出て、高島屋に向かう信号を渡りしばらくすると、ガラス張りの二階建ての建物が見える。

『Krispy Kreme』

独特の書体で書かれたそれは、一見読みにくいが、今ではその看板を見れば多くの人が『クリスピー・クリーム・ドーナツ』とわかり、10年前にオープンしたときの長い行列を思い出すはずだ。

 

その新宿1号店が1月3日の今日、閉店する。

 

2000年はじめまで人気があったアメリカのドーナツチェーン『クリスピー・クリーム・ドーナツ』が日本に上陸したのは10年前の2006年12月だった。

本家であるアメリカでは急速なチェーン展開が仇となり、2003年ごろから売上げが伸び悩んだ。翌年の2004年から200店舗以上が閉店して大きな損失を出した。

 

2006年の日本への上陸は大手食品会社のロッテと流通会社のリヴァンプが行った。

『アメリカ』、『スイーツ』、『行列』

この三拍子が揃えばメディアも放っておくことはない。「長い行列」は店のステータスとなり、人気が人気を呼んだ。

12月の寒い日を何時間も待つ客に、店は看板商品である温めた『グレーズド』を配って回った。店側の好意とみることはできるが、これも戦略の一つだったのだろう。行列に並ぶ客は喜び、さすが人気がある店だと思ったに違いない。口の中で軽く溶けるドーナツは柔らかく甘い。行列客の期待は、待ち時間が長いほど膨らみ、冬の寒さを忘れさせてくれた。

10年前、平たいテイクアウト用の箱を持って街中を歩く人は、あの長い行列に心躍った人たちだった。

 

新宿サザンテラス1号店には、すでに行列はない。次から次へと日本に登場するスイーツに人々は群がり、夢が覚めるとまた次の夢へと向かっていく。人は夢から覚めるのが早いのに、店はまだ夢の中にいる。いつまでも夢が覚めなければいいと思ったときには、店自体が冷めているのである。レンジで温める『グレーズド』のように店は簡単に温かさを取り戻すことはできない。

 

夢は覚めるものである。勢いに任せて前進ばかりしていては進んできた道を踏み固めることはできない。弱点となる部分はないか。ライバルの動向は。時の流れに合っているか。その場に留まり、見直すことも時には必要である。

 

ドーナツは昔から親しまれている。だれもが手軽に買うことができるドーナツは1個100円が相場だ。200円前後の価格帯を見れば財布のひもは硬くなる。満員電車の中で平たいテイクアウト用の箱は不便である。行列に並ぶ間にサービスでもらえるドーナツでお腹いっぱいになり、買うときには決めていた数よりも減らすと友人は言っていた。

 

クリスピー・クリーム・ドーナツは今後、地域に密着したドーナツ店として人々に親しまれていきたいとしているが、その前には巨大な『ミスター』が立ちはだかっている。

 

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