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あなたは本当の五木寛之を知っているか!? 『蒼ざめた馬を見よ』

BOOKs

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/pdmagazine

 

第56回直木賞

1966年下半期。第56回直木賞。五木寛之34歳。『蒼ざめた馬を見よ』、他『GIブルース』の両作品で直木賞ノミネート。

 

同年の上半期に行われた第55回直木賞では、彼の処女作である『さらば、モスクワ愚連隊』がノミネートされていた。

 

その第55回直木賞の選考委員は柴田錬三郎をはじめ、松本清張など、他合計10名だった。

『さらば、モスクワ愚連隊』に対する柴田錬三郎と松本清張の評価と評言は以下の通りであった。

柴田錬三郎

評価:◎

評言:「これは、今期候補作品中、最もフレッシュな、いわゆるパンチのきいた現代小説である。私は、文壇がこれまで持たなかった新しいタイプの作家を出現させることになる、と確信をもった。」

松本清張

評価:△

評言:「才筆だが、これ一本では何とも分らない。あとの作品を待望する。欲をいえば、もう少し本格的なプロットがあってほしいと考えるが。」

※参考資料:五木寛之-直木賞受賞作家|直木賞のすべて

 

このときは他の選考委員の評価が思わしくなく受賞を逃した。

 

そして第56回直木賞。選考委員は前回とほぼ同じ顔ぶれの柴田錬三郎をはじめ、松本清張など、他合計9名。

このときも前回と同様、柴田錬三郎の推しは強かった。

柴田錬三郎

評価:◎

評言:「直木賞というものは、やはり、文壇に新しい風を送り込んで来る新人を登場させるのが目的である、と思う。その意味では、五木寛之は、最も、直木賞にふさわしい新人である。このような新人は、幾年に一人も現われるものではない。」

松本清張

評価:◎

評言:「すでに、この作者の前期の候補作品や、その後に発表された作品などからみて実力十分で、何も云うことはない。」「この作者の新鮮さが今後の文壇に確実な地歩を築くことを疑わない。」

※参考資料:五木寛之-直木賞受賞作家|直木賞のすべて

 

他の選考委員も高評価だった。7名が◎。2名が◯だった。

 

第56回直木賞受賞作品:『蒼ざめた馬を見よ』五木寛之(著)

 

読者を物語へ引き込む圧倒的な内容

物語の舞台は日本とソ連。話はある新聞社の会議室から始まる。

アレクサンドル・ミハイロフスキイが書いた体制批判の未発表小説を密かに入手するためにソ連行きを命じられた新聞記者の鷹野。その小説はソ連では発表できない内容のものだった。

 

鷹野は現地で知り合ったオリガという女性の協力を得て、ミハイロフスキイから小説の入手に成功。鷹野はその小説を日本に持ち帰った。

 

しばらくして小説は匿名で刊行された。タイトルは、

 

『蒼ざめた馬を見よ』

 

その作品は瞬く間に全世界でベストセラーとなった。

 

しかし刊行から数カ月後、作者であるミハイロフスキイがソ連で逮捕されたことを鷹野は知った。

 

ミハイロフスキイの裁判が迫ったある日、一人の男が鷹野の前に現れて彼をある建物に連れて行った。そこには捕まったはずのミハイロフスキイの姿が。

 

男は、このミハイロフスキイは偽物であることを告げ、事の真相を鷹野に話し始めた。

 

 

現在でも通用するストーリー展開

物語の舞台は日本とソ連。日本ではあまり想像できない当時の政治体制のソ連という国を読み取ることができる。

 

そのソ連をも崩壊させてしまう力を秘めているミハイロフスキイの小説『蒼ざめた馬を見よ』を巡る物語なのだが、そこに仕掛けられた巧妙な計画。

 

なにが事実でなにが偽りなのか。国の政治と、そこに関係する社会のあり方を読者に問う小説でもあり、それでありながらエンターテインメント性を追求した疾走感は時代を経た今でも色あせない。むしろ鮮明なままである。

 

衝撃の結末を読んだあの時には戻れない

24歳のときにこの作品を読み、その世界観と衝撃的な結末。読後はなにも手につかず、しばらくイスに座ったまま動けなかった。

 

ストーリー。テンポ。読みやすさ。どれをとっても欠点らしい欠点はないのだが、一つあげるとすれば、読者を物語の中へ引きずり込む力が強すぎて、メインの鷹野と同じ気持ちになってしまい、肩に力が入り、どっと疲れてしまう。

 

読後はその疲れから放心状態となる。そしてすぐに襲ってくる「ロス」感。

もう一生、これと同じ読後感を味わえないことへの虚しさと寂しさ。

 

そして時をおいて再読する。期待を持ってページを開く。しかしあの時の気持ちの再現はない。

 

もし時間を戻せるのなら、『蒼ざめた馬を見よ』の1ページ目を開いたときの、24歳の夕暮れ時の自分に戻りたい。本気でそう思うことが、今でもある。

 

あの感覚をこれから体験できる人を、羨ましく思う。

 

だれにも邪魔されず、お気に入りの場所で、コーヒーを飲みながら、本に手をかけてほしい。

 

さあ、物語の始まりだ。

蒼ざめた馬を見よ

蒼ざめた馬を見よ (文春文庫)

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