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祝 1万PV突破記念 これだけは読んでほしい『小説(日本人作家)』編

 この企画も最後となりました。読んでくださった方々、本当にありがとうございました。これまでご紹介したすべてのものはオススメです。なにか一つでもみなさまの気をとめるものがあったことを、わたくしは願っております。

 最終回はわたくしが“本”、“文章”というものに関心を持つきっかけとなった日本人作家の方々の本の紹介となります。特に1位の作品はわたくしの生き方を変えてくれたものと言っても過言ではありません。今でも、読んでいたときの場所、時間、におい、そのすべての場面を思い出せるほど鮮明な記憶が残っています。

 では最終回。ご紹介します。

 

1位:『蒼ざめた馬を見よ』(五木寛之著)

蒼ざめた馬を見よ (文春文庫)

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 わたくしがこれまで生きていてもっとも衝撃を受けた作品です。大げさな表現かもしれませんが後にも先にもこれを超える作品には出会えないのではないでしょうか。

 23歳のときに初めて五木寛之さんのこの作品にふれたときの、その衝撃と、驚きと、圧倒的な世界観と、さらには嫉妬、読む人の心をペンと紙でこれほどそわそわさせることができるのかと、読み終わったときの脱力と倦怠感、それほどわたくしにとっては人生を左右する作品でした。これだけ人の心を揺さぶる作品を自らも書きたい衝動に駆られて、25歳のわたくしが大学の文学部に入る決め手の一つになったことは事実であります。

 多くの方が知っている五木寛之さんというと『大河の一滴』や『親鸞』など、小説というよりも、指南書、生き方を説いたものではないでしょうか。しかしデビューはもちろん小説です。わたくしはデビュー作である『さらばモスクワ愚連隊』も『蒼ざめた馬を見よ』と同じほど好きです。若かりしころの五木寛之さんの作品のすべてがその時代背景を写しており、圧倒的なパワーです。

 これまで何度も読み返しましたが、現在でも古くさくないのが不思議です。しかし、あの23歳のときと同じ衝撃をうけることはないでしょう。それが、一度読んでしまった者の定めです。

 あえて内容は紹介しません。みなさまの目でご確認ください。

 

●2位『方舟さくら丸』(安部公房著)

方舟さくら丸 (新潮文庫)

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 わたくしは五木寛之さんの作品を読んだのは23歳のころでした。そのとき安部公房さんの名前は知っていたのですが、まったく読むことはありませんでした。イメージ的にちょっと難しいと勝手に思っていました。

 社会人入試で東京の大学に入り、30歳手前で初めて安部公房さんの代表作『砂の女』を読みました。正直に申し上げれば「面白い! とは思わないけど、変わっているな」という印象でした。なにもわかっていないくせになんだか生意気な言い方ですね。すみません。

 わたくしが言う「面白いとは思わない」というのは、ぐっと、一瞬で引き込まれるような、エンターテインメント的な作風とは感じなかったということです。それがいい悪いということではありません。安部公房作品をわたくしの勝手な表現で言えば「ねっとりとして、人を迷路に誘い込む」ような感じなんです。時間をかけて引き込む。それまでわたくしはこういった作風とは無縁でありましたので、それはそれで新鮮でした。

 『砂の女』を皮切りに、安部公房作品はすべて読みました。『安部公房レトリック事典』という彼が作品中に使った言葉の事典まで購入してしまう始末です。そこまで好きになったのは、噛めば噛むほど、と言えばいいのか、なんだか気になる、読まずにはいられなくなる、まさに中毒性を持っています。

 わたくしが思う安部公房さんの作風は長編と短編で違うものです。数ある短編はどれもといっていいぐらい“奇妙”な日常を描いています。まさに『世にも○妙な物語』です。無味無臭、登場人物も乾いています。読むほうも構えなくていいから奇妙な物語の中に入りやすい。

 しかしこれが長編となるとそうではない。登場人物はそれぞれ憎たらしいほど魅力を持っています。特に主人公たちは変わっています。劣等感の固まりではっきり言えばオタクです。作品の世界では魅力がない人間になっていますが、それが読むほうには魅力的なのです。

 話が作品ではなく安部公房になってしまいました。この『方舟さくら丸』は客船ほどの大きさの地下基地に住むイノシシと豚を合わせたような主人公と、いつか起こるである地球滅亡に備えて彼が選んだ人たちが方舟で暮らす話となっています。

 作品の中で、なにかすごいことが起きたりするわけではないのですが、同乗した人物たちの不毛なやりとりがわたくしは好きです。彼らのやりとりが主人公を地上に戻したシーンはいいです。そして物語のキーワードは“ユープケッチャ”。

 文学の天才がいるとすれば、わたくしは間違いなく安部公房さんはその一人だと思います。まさに天の才です。

 

●3位『名もなき孤児たちの墓』(中原昌也著)

名もなき孤児たちの墓

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 『文学賞メッタ斬り』という対談本でわたくしは中原昌也さんを知りました。

 『名もなき孤児たちの墓』に収められている『点滅……』という中編が芥川賞候補になりましたが選考委員会から相手にもされず、筆者が『SPA!』で選考委員を批判して話題になりました。受賞できなかったことに対して『文学賞メッタ斬り』でそのことにふれています。この対談本をきっかけにわたくしは中原さんの作品を読み始めました。

 本書に収録されている『点滅……』は芥川賞を受賞できませんでしたが、短編集である本書自体は野間文芸新人賞を大方の支持を得て受賞しています。

 はっきり申しまして暴力的な作風です。そうとう飛んでいます。本書は超短編を集めたものがほとんどで、どれもが数十ページで終わります。しかしそのどれもが独創的で野蛮で暴力的で、それでいて疾走感があり、けっしてドロドロしていません。

 中原さんは野間文芸新人賞を受賞するほどの方なのに書くことがきらいなんです。本人も書くことが苦痛で苦痛で仕方がないと言っています。殴るように書いて、絞り出すように書いて、それが作品にも表れています。どれを読んでも苦痛に満ちていますが、なぜか笑ってしまう。驚きますよ。本当に。

 本書に収められている『ドキュメント 授乳』は一読の価値ありです。

 

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