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長く、短い夜

ニューヨーク 夜景

 

いつもと同じ時間に眠りについているのに、眠れない夜がある。

たとえば布団の中で今日のことを考える。仕事でうまくいかないことがあって、大丈夫だろうかと不安になる。今からどうすることもできないから、まずは眠ることを考える。

しかし、眠ろうとすればするほど、頭が冴えてきて眠れない。体が温まり寝返りをうつ。眠れない。眠れない原因は仕事のことなのだが、どうすることもできないから早く眠りたいのに眠れない。これがいつまでも続く。

 

眠れない原因は人ぞれぞれだ。仕事で大きなミスをした。会社の上司から注意された。夫婦喧嘩。友人との言い争い。好きな人への恋心。恋人との別れ。最愛の人の死。

 

だれかに話を聞いてもらって気がまぎれたとしても、布団に入れば一人の世界が待っている。眠れない夜ほど、人間は一人であることを実感してしまう。目をつぶり朝起きれば短いものなのに、眠れない夜はどこまでも長い。

 

 

少し前から眠れない日が続いている。

布団に入ると考えごとをしてしまう。最近は、毎日のように連絡を取り合っていた人からぱったりと連絡がなくなってしまったことが気になって、なかなか眠りにつけない。

日常の一部となっていたことが急になくなると、ぽっかり穴があいたような、寂しい気持ちになる。

 

「そんなことで眠れないのか」

 

そう思うかもしれないが、そんなことでも人は眠れなくなるものだ。

 

考えるから眠れない。布団の上でじたばたしだすと余計に眠れなくなる。

そうなると、わたしは〈夜に抵抗〉することをやめる。スタンド電気をつけて、短く軽いエッセイを読む。そうすれば、だれもが眠っている時間に、神様がわたしに与えてくれた特別な時間に変わる。

 

 

子どものころ、眠れないことに不安と恐怖を感じた。

「もう一生眠れないのでは」

そう考えると、ますます夜は恐怖へと変わった。寝返りをうち、足をばたつかせ、掛け布団を剥いだ。

居間に行くと、父親がいた。眠れないことを告げると、無理に寝る必要はないとわたしに言った。みんな眠らなければならないのに、眠れないということは、その夜は少し遅くまで起きていていいと、神様がくれた特別な時間だと教えてくれた。

 

その父親の言葉は今でも覚えている。だから、眠れなくなった夜は、その時間を貴重なものとして楽しむようにしている。

 

 

たぶん、今日もこの地球のどこかで、眠れない夜を過ごしている人がいるはずだ。

不安と恐怖を感じる夜かもしれない。打ち勝とうと格闘している夜かもしれない。抵抗することをあきらめた夜かもしれない。

 

わたしの眠れない夜は、しばらく続くかもしれない。今日も抵抗しないことに決めている。

 

長く、短い夜が、今日もやってくる。

 

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